ストレスケア東京上野駅前クリニックでは、認知行動療法(CBT)の中でも、第3世代認知行動療法と呼ばれる、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)に力を入れています。
10代・20代の方々のための心療内科クリニックである当院では、思春期のこども・若者が取り組みやすいワークシートを制作し、治療で使用しています。
☕ 第3世代認知行動療法としてのACT
認知行動療法は、第1世代・第2世代・第3世代に分けられます。それぞれに次のような特徴があります。
ACTは第3世代とされる最新の認知行動療法です。
第1世代 | 行動の原理を臨床的な問題に適用 |
第2世代 | 認知を組み入れ、不合理な思考を変えることによる、感情・行動の変化を目指す |
第3世代 | 思考や感情の内容ではなく、その機能(文脈)を変化させることで行動の変化を目指す アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のほか、マインドフルネス認知療法(MBCT)、弁証法的行動療法(DBT)、機能分析心理療法(FAP)などが含まれる |
☕ ACTの理論的背景
ACTは、「関係フレーム理論(RFT)」(Hayesら2001)という言語・認知に関する理論に基づいています。
ACTでは、症状にこだわらず、全般的な心理的プロセスに焦点を当てます。
そして、それらの心理的苦しみが、心理的柔軟性を失わせるような言語的プロセスによって引き起こされると考え、その心理的柔軟性を高めることがACTでの目標となります。
そのために、体験的エクササイズやメタファーを用い、要支援者が「今ここの瞬間」に触れ、「自らの価値に沿って行動」できるよう、支援していきます。
ACTは、個人の価値を明確にし、その価値に基づいて、人生を生きることに意味を感じ、心理的柔軟性を増して行動していけるよう、後押しします。
☕ 思春期世代へのACT
ACTは体験的エクササイズとメタファーを使用する点で、子どもに特に適しています(Grecoら2005、Murrellら2004)。
気分の波や不登校など、思春期世代が抱えがちな、いわゆる症状や問題などを扱う際、ACTでは「体験の回避」という行動に焦点を当てます。
「体験の回避」はアクセプタンスとは正反対の行動です。
「体験の回避」とは、特定の体験(感情・思考・記憶・身体感覚・行動特性)と接触し続けることを避け、それらを受けられないでいる状態です。この体験の回避は、思春期世代においてしばしば、適応上の問題を引き起こします。
【例】
人と話すのが苦手 ▷ お腹が痛くなる ▷ 学校を休む ▷ 気持ちも体も楽になる ▷ 学校を休み続け、人を避けるようになる
ACTでは、多くの問題の中核が次の4つ(合わせてFEARと呼びます)で表されます。
・思考とのフュージョン(Fusion)
・体験の評価(Evaluation)
・体験の回避(Avoidance)
・行動への理由づけ(Reason-giving)
では、そのような問題を抱えているとき、どうすれば良いのでしょうか?
それが次の3つ(合わせてACT)です。
・反応と現在の受け入れ(Accept)
・価値ある方向を選択する(Choose)
・実行する(Take action)
ACTでは、自らの体験を進んで受け入れ、今この瞬間に存在する思考や感情をあるがままに受容し、心理的柔軟性を高め、価値に沿った生き方をできるように支援します。
ACTは決して不登校を改善するための治療法としてあるわけではありませんが、学校を中退するリスクのある青少年に対しACTによる介入を行うことで出席率が向上した、という報告もあります(Mooreら2003)。